2024/07/01号 スカルプ&ヘアケア
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今年は遅い梅雨入りとなりましたが、この短い梅雨が終わると、夏の強い日差しが容赦なく私たちの頭上に降り注ぎます。
真夏の屋外では太陽の一番近いところで強い紫外線を浴び、大量の汗や皮脂を分泌します。室内ではエアコンの風によって髪や頭皮は乾燥し、相当なダメージを受けることでしょう。また暑さで食欲が落ちたり、夏に向けての無理なダイエットで髪の栄養状態が悪化してしまうことも考えられます。
髪の「美容と健康」の分野では毎年のようにブームとなるキーワードがあります。
ここ数年では『ボタニカル』『オーガニック』『ノンシリコン』などでしょうか。最近では髪のツヤ感を演出する『アルガンオイル』など、オイル系のアイテムも注目を集めています。
聞いたことはあるけれど、イメージばかりが先行してそれらがどんな特徴をあらわしているのか、じつはよくわからない…なんて人も多いのでは!?『ボタニカル』
植物由来の成分が配合されたもの /『オーガニック』
有機肥料で栽培された農作物や植物が原料となっているもの /『ノンシリコン』
合成樹脂Silicone(シリコーン)が配合されていないもの /『アルガンオイル』
モロッコ原産の木の実から採れる /
抗酸化物質、ビタミンE、必須脂肪酸が豊富 /多くの商品があふれている中からあなたが選ぶのはどんなものですか?
髪や地肌にやさしいもの、環境にやさしいもの、髪のクセや性質を改善してくれるもの、パッケージのデザイン? コスパ? などなど…
人によって選ぶポイントも違ってきますよね。私たちヒトの皮膚や毛髪にはどんな特徴があるのかを再確認して、自分の好みや髪質に合ったヘアケア商品を探してみてはいかがでしょうか?
毛髪は大きく分けると3層構造になっています。中心部にはタンパク質が主成分のメデュラ、その外側には毛髪の重さの85~90%を占めるコルテックスがあります。
そしていちばん外側には、かたいタンパク質が主成分のキューティクルが覆っています。*髪の守護神「キューティクル」
キューティクルを形づくるのは半透明のうろこ状の組織で、根元から毛先に向かって6~8枚ほどが重なりあい、髪の内部組織を守る働きをしています。
そしてキューティクルの各層の表面にはMEA(18-メチルエイコサン酸)と呼ばれる脂質が覆っていて、毛髪表面の摩擦を軽減したり、なめらかな潤いやツヤを演出しています。*皮膚表面の免疫機能
私たちの皮膚表面には「皮膚常在菌(善玉)」が生息していて、汗と皮脂を分解し脂肪酸を生成しています。
この脂肪酸によって私たちの体表面は弱酸性に保たれ、細菌やウイルスなどの病原体の侵入を防いでいます。*角質層のバリア機能
病原体以外にも私たちの肌はさまざまな脅威にさらされています。
大気のホコリやチリ、紫外線も常に私たちに降り注いでいます。皮脂膜の下の角質層には「ケラチン」と呼ばれるタンパク質でつくられた「角質細胞」と、角質細胞の周囲を埋めている脂質(主要構成成分「セラミド」)で形成されていて、この層が強力なバリア機能となり、さまざまなストレスから肌を守ってくれています。そして表皮の一番下の基底層では新しい細胞が作られ、それが徐々に角質層まで押し上げられていき、垢やフケとなって剥がれ落ちます。
紫外線などのダメージを受け生成されたメラニン色素も、ターンオーバーによって排除されるしくみです。禁煙補助薬のニコチンパッチのように、医学的には「経皮吸収システム」による薬物の投与法が確立されています。
これらの経皮吸収型製剤は、角層のバリア機能を損なうことなく、皮膚への安全性を十分に考慮された上で開発されたものであり、ゆっくりと時間をかけて薬剤を浸透させることで治療効果を発揮します。
経皮吸収率が腕の皮膚と比べて3.5倍ともいわれている頭皮。
ヘアケア製品を選ぶときには配合成分が気になってしまうという人も多いはず。でも私たちのからだを覆う皮膚には何段階もの防御機能があり、髪や頭皮にも優れた機能が備わっています。
とは言っても近年の夏はとても過酷です。あまり無防備になり過ぎないで、紫外線対策と、自分に合ったスキンケア・ヘアケアをぜひ見つけてみてください。