2024/12/01号 もの忘れと記憶力
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「え~っと、なんだっけ? のどまで出かかってるんだけど…」人や物の名前が出てこなくてじれったい思いをしたことはありませんか。
40歳を過ぎるとちょっとしたことが思い出せなくなって記憶力の衰えを感じるようになってきます。
鍵をどこに置いたんだっけ? 何をしにこの部屋に来たんだっけ? なんてこともよくあるのではないでしょうか。記憶のしくみを知ることでもの忘れに対する不安を解消し、毎日のちょっとした工夫で記憶力アップを目指しましょう!
私たちはもの忘れをするたびに、自分の記憶力の無さを責め、情けない気持ちになり落ち込んでしまいます。
でも、「ヒトは忘れる生き物」なのだと聞くと、安心しませんか。どうやら人間の脳には「忘れる」というメカニズムがもともと備わっているらしいのです。
例えば、過去の思い出深い体験は時間がたっても鮮明に覚えていたりします。
強い感情をともなうエピソード記憶はそう簡単には薄れるものではありません。でも、「つらい記憶」は脳にストレスとなるため、ヒトは生きていくために脳内の神経回路を整理し、必要な記憶は保護し、不要とされるものは『忘れる(脳の奥の記憶の箱にしまわれる)』のだと考えられています。
では、忘れたくない大切なことをずっと覚えているためにはどうしたらいいのでしょう。
学生のころ、一夜漬けで勉強した経験はありませんか? 試験が無事終わればさっぱりと忘れてしまう、数時間から数日程度の記憶です。こうした記憶を「短期記憶」といいます。しかし、繰り返し繰り返し時間をかけて覚えた事柄はいつまでたっても忘れません。自転車の乗り方やお箸の使い方などがそうです。
反復して覚えることで固定した記憶となり、数年、数十年、生涯忘れないものとなります。これが「長期記憶」です。私たちがもの忘れしないためには、短期記憶を長期記憶にしてあげることがポイントのようです。
睡眠は肉体を休ませるためだけではなく、脳の発達にも重要な役割を果たしています。
睡眠前1時間に記憶したことは、忘れにくいということがわかっています。そして睡眠中でも脳内の記憶情報は自動的に整理され、必要な情報と不要な情報とに選別されているのです。一日の終わりに、その日にあった大事な出来事や、取引先の人の名前や顔などを、もう一度思い返してみましょう。
そして朝起きて一日の始まりでまず大切なことは、しっかりと朝食を摂ることです。私たちの脳は寝ている間も働いています。
もしも朝食を抜くようなことがあれば、睡眠中に消費したエネルギーを補給できないまま、仕事や勉強に取り組むことになります。
朝からエネルギーが空っぽの状態では、その日の脳はほとんど働いてはくれないでしょう。まず、脳のエネルギー源である「ブドウ糖」に注目しましょう。
脳はいつも大量のブドウ糖を必要としています。それを補給するには、日本人ならやはりお米が一番です。では、記憶力向上のためにはどんな食べ物がよいのでしょうか。一言でいえば、ズバリ「魚」でしょう。
魚には脳に欠かせない栄養素が豊富に含まれています。なかでも脚光を浴びているのがDHAです。DHAを多く含む魚には、マグロ、ブリ、サバ、サンマ、イワシなどがあります。
短期記憶の促進に役立つ栄養素にレシチンがあります。レシチンは大豆や卵黄、牛のレバーなどに含まれています。忘れてはいけない必要な情報はメモをするようにしましょう。それを目の届きやすい場所に貼っておきます。
そして目にするたびに声に出して読み上げると、視覚からも聴覚からも情報がインプットされ、脳への定着率が高まります。ドイツの心理学者でエビングハウス(1850-1909)という人がいます。
彼が導きだした忘却曲線が有名ですが、これによると、一度覚えた事柄について、次に復習(反復)するまでの時間が短いほど、覚え直しに要する時間が節約できるというのです。習い事や学習の効率を上げるには、覚えたらあまり時間を空けずに復習や反復練習をおこなって、長期記憶へと定着させてあげましょう!
(画像参照:ウィキペディア「忘却曲線」